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「何をしている」
「行かないで…お願い…」
弱っているせいなのか、この場からいなくなるのを恐れているかごめは今にも泣きそうな顔で言った。
仕方なく、またその場に座る奈落。どうしたものかと考えていると
「かごめ大丈夫かい?」
「…大丈夫?」
「かごめ様、ごはん食べれそうですか?」
タイミングよくきた3人は、食事を持ってきたついでに様子を見にきたようで。
「あ、ありがとうみんな。大丈夫、ただの風邪みたいだから」
3人は心配そうにしている。本当は看病をしたいのだろうけど、かごめの隣にいる人が看病などさせてくれないのはわかっているが。
「奈落、あたしらで看病しようか?」
神楽が一応聞くが、もちろんその答えは
「いらぬ。お前たちは心配しなくてもいい。わしが看ているからな」
と言われ部屋から追い出され、3人は渋々部屋から離れて行った。
「追い出さなくてもいいのに」
「かごめがここにいろと言ったではないか」
フッと笑みをこぼし言うと何も言えないかごめ。
「それより、食欲はあるのか?食べた方がよいのだが」
琥珀が持ってきた夕食。食べやすいようにお粥になっている。だが、今はまったく食欲はでない。しかし、食べないと治るものもなかなか治らないので、渋々
「じゃあ、ちょっとだけ…」
起き上がって、お粥を食べようと手を伸ばすと
「ちょっと」
「……」
無言でその伸ばす手からお粥を遠ざける。
その行動に理解不能なかごめは必死に手を伸ばすが、届くことはない。
「もう。なんなのよ!」
にらみつけて言うと同時に。
「わしが食わしてやる」
そう言って自らお粥の蓋をあけ、匙でお粥をすくった。
「え、大丈夫だよ!自分で食べれる…」
食べれるからと言う前に、奈落がお粥をかごめの目の前にさしだした。
ご丁寧にふーふーして冷ましてくれて。
奈落とそのお粥を交互に見ているが、奈落は食えの視線しか出ていない。
仕方なく目の前のお粥を一口食べる。
もぐもぐ。……ごくん。
「うまいか?」
「…う…ん」
この行動に恥ずかしさが出てきてしまい、うまいかどうかなんて頭になく。それを察しているのかいないのか、また次のお粥を差し出してくる。
「や、やっぱり、自分で!」
お粥を奈落から奪おうとするが、頑として渡そうとせず、渋々食べて行くのだった。
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