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室内は水を打ったように静まりかえる。
丁度、曲も終わってしまって広告用のプロモーションがTVからは流れていたけど、今のこの何とも言い難い微妙な空気にはその明るい音楽もあってないようなものだった。
その場にいた皆が、美香と弘美に注目する。
美香は何て言っていいか分からない様子で、本人が目の前にいる事もあってとても言いにくそうだった。
けれど、誰も救いの手を差し出す事は出来ない。
皆がハラハラしたような心境の中、1人だけ我関せずのような余裕の表情の人間がいた。
男子A君である。
彼はうっすら口元に笑みさえ浮かべて事のなりゆきを見守っていた。
こいつ…。絶対、性格悪いな…。
全く話してもいないし、自己紹介などもしてないから名前すら知らないが、直感的に思った。
「…え~と…後でね?」
苦笑いを浮かべて、遠慮がちにやっとそれだけ口にした美香。
弘美はふーん。とつまらなそうにしていたが、さすがに可哀想だと思ったのか追及はしなかった。
けれど、空気は微妙なまま。曲も止まってしまい、誰も入れようとしない。
あー、これってなんか面倒なパターン…。
出来れば、雰囲気をぶっ壊してくれた弘美に責任をとってどうにかして欲しいけど。
彼女、さすが大物だ。
携帯を取り出し、ゲームなんかし始めた。
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