夏。

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俺の名前は剣崎ソウヤ。どこにでもいる普通の高校生だ。 今は夏真っ盛り、俺達は海に来ていた。そう、俺達だ。なんてったって俺には彼女がいるのだ。 「この海はヴェアたんが貸し切る! テレズマ充填開始……ッ」 「ちょ、何やってんだお前ッ」 「魔術『真夏のアバンチュール!? ときめき☆ラブメイクビーチ』を解放!」 ヴェアの背中から羽根が広がり、砂浜に魔方陣が現れる! 「いっけえ!」 白い光が爆発した── 真上にはギラギラと燃え盛る太陽。寄せては返す波の音。海鳥の鳴き声。少女たちの嬌声。そして、 「ギュオオアアアアアァァアアアアッ」 魔物の鳴き声。俺は飛び起きた。 「起きた! 良かったー。死んじゃったかと思って、わたし、わたし……」 抱きついてきたのは姫宮アルカ。俺の彼女で、いわゆるヤンデレだ。 彼女の肩越しに、砂に頭から腰までを埋められ、足しかないヴェアが見えた。 「大丈夫? どこも痛くない?」 「ああ、大丈夫だ」 本当は少し眼の奥が痛いが、ここで大丈夫だと言わないとヴェアが死ぬ。 「リュアは?」 「あれ? あれあれあれ? ソウヤくんが他の女の子の話をしている気がするな? おかしいね? 耳がおかしくなっちゃったのかなあ? あれー?」 「ごめんなさいなんでもないです」 「そう? リュアちゃんならあそこででっかい魚と戦ってるよ」 訊いたことにはちゃんと答えてくれるのがこいつのいいところだ。アルカの指を差した先を見ると、 「来た! キタキタキタ! 本日354セット目の白子! 今日はもう白子風呂に入れるわ! いやーん、若返っちゃう! 1000年分くらい!」 マグロから白子をつかみとっているリュアの姿があった。……今こいつに近づいたら危険だ。去勢される……。 「ねえ、ソウヤくん? わたしと遊ぼうよぉ」 アルカが俺を押し倒す。こいつ、頭は悪いがスタイルはいいのでいろいろとヤバい。あー! どうすればいいんだ俺は! 頭を上げ、頭上を見上げる。頭上と言っても、寝っ転がってるから後ろって事になるのだが、反転した視界に、おかしなものが見えた。 桜だ。やけに赤い桜が咲いている。
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