2人が本棚に入れています
本棚に追加
俺の名前は剣崎ソウヤ。どこにでもいる普通の高校生だ。
今は夏真っ盛り、俺達は海に来ていた。そう、俺達だ。なんてったって俺には彼女がいるのだ。
「この海はヴェアたんが貸し切る! テレズマ充填開始……ッ」
「ちょ、何やってんだお前ッ」
「魔術『真夏のアバンチュール!? ときめき☆ラブメイクビーチ』を解放!」
ヴェアの背中から羽根が広がり、砂浜に魔方陣が現れる!
「いっけえ!」
白い光が爆発した──
真上にはギラギラと燃え盛る太陽。寄せては返す波の音。海鳥の鳴き声。少女たちの嬌声。そして、
「ギュオオアアアアアァァアアアアッ」
魔物の鳴き声。俺は飛び起きた。
「起きた! 良かったー。死んじゃったかと思って、わたし、わたし……」
抱きついてきたのは姫宮アルカ。俺の彼女で、いわゆるヤンデレだ。
彼女の肩越しに、砂に頭から腰までを埋められ、足しかないヴェアが見えた。
「大丈夫? どこも痛くない?」
「ああ、大丈夫だ」
本当は少し眼の奥が痛いが、ここで大丈夫だと言わないとヴェアが死ぬ。
「リュアは?」
「あれ? あれあれあれ? ソウヤくんが他の女の子の話をしている気がするな? おかしいね? 耳がおかしくなっちゃったのかなあ? あれー?」
「ごめんなさいなんでもないです」
「そう? リュアちゃんならあそこででっかい魚と戦ってるよ」
訊いたことにはちゃんと答えてくれるのがこいつのいいところだ。アルカの指を差した先を見ると、
「来た! キタキタキタ! 本日354セット目の白子! 今日はもう白子風呂に入れるわ! いやーん、若返っちゃう! 1000年分くらい!」
マグロから白子をつかみとっているリュアの姿があった。……今こいつに近づいたら危険だ。去勢される……。
「ねえ、ソウヤくん? わたしと遊ぼうよぉ」
アルカが俺を押し倒す。こいつ、頭は悪いがスタイルはいいのでいろいろとヤバい。あー! どうすればいいんだ俺は! 頭を上げ、頭上を見上げる。頭上と言っても、寝っ転がってるから後ろって事になるのだが、反転した視界に、おかしなものが見えた。
桜だ。やけに赤い桜が咲いている。
最初のコメントを投稿しよう!