俺とヤンデレな彼女

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俺の名前は剣崎ソウヤ。どこにでもいる普通の高校生だ。 ちょっと違うところは……。特になかった。死にたい。 とりあえず主人公は読者が感情移入しやすいように大したステータスは持っていないのだ。フラグ体質以外はな。 俺は購買での弁当争奪戦に負けたという些細な理由で学校から盗んだバイシコウで走り出し、学校から3km南にいった所にある神社に来ていた。別に自転車は盗んだわけではないのだが、鍵を無くしたのでぶっ壊して乗ってきたのだった。俺のだよ。 神社の苔が生えかけた石畳に寝っ転がり、空を仰いだ。 鎮守の森って言うんだっけ。大木の枝が空を覆い、午後の日差しをひたすら柔らかく緑に染めていた。 その時だった。 どーん。 「わっ、わっ、ここはどこ? わたしは……ヴェアたん。よーし、大丈夫。って、はうわ!」 賑やかな女が落ちてきた。木登りでもしてたのか? ヴェアたん。 「何やってんだ?」 「な、人間! わたしが下着を着ていないからと言ってふらちなことをするなら夜にしてね!」 馬鹿だった。こいつは多分俺には手がつけられないレベルの馬鹿だ。 「お前、頭でも打ったのか?」 「打ったさ! 全身打撲さ! 『大丈夫か?』というセリフと共にセクハラされる準備は万端だ! さあ、早くわたしを看護しろ!」 とりあえずケリを入れた。絶対こいつ馬鹿だ。確定だ。 「その蹴りがわたしを悦ばせているとはこの男は思っていなかっただろう……」 俺は無視した。 「お前、何してたの?」 「あっ」と言うと、身なりを整え、コホン、と咳払いして、 「私の名前はヴェア=フィール。天にまします我らが父より遣わされた天使である」 なるほど。 「えっ、えーっと、その、なんか天界でハルマゲドンのあったごたるですよぅ。で、ちょっと大変なもので、人間に助けてもらおうかと」 あんたどこの人だ。 「とりあえずあんたが適任者やけん、これからは悪魔と戦ってもらうけんね、よかと?」 いやばい。 穏やかなる俺の日常は、ある圧倒的な存在によって激変した。俺の日常<これから>、どうなるのかな。
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