2人が本棚に入れています
本棚に追加
コウモリの翼を生やした女がいた。
これ、あれか。サキュバスか。
「あなたの近くに天使が来ませんでしたか?」
不用意に俺に近づいて話しかけてくる。いいのか? 俺の隣にはアルカがいるんだぞ。
「教えてくれないかしら?」
サキュバスさんは身長165センチくらい、長い金髪はストレートで、腰まで届くくらいだ。仕草一つ一つが妙に淫靡だが、容姿は普通の高校生みたいだった。服装は真っ黒なワンピース? ところどころ破れていて露出が多い。
赤くぬられた爪が俺の首筋に突き立てられる。
「ソウヤくんから離れてくれませんか」
ほら、来た。でもな、セリフと同時に手を出すのはどうかと思うんだ、アルカ。
「ふ、あなた、恋人気取り?」
サキュバスさんは左手でアルカの拳を受け止めていた! なんということだ。
サキュバスさんとアルカはお互いに飛び退いて距離を取る。アルカがポケットからナイフを取り出した。
そんなもの持ってたのか。今度叱ってやらないと。
「私の名前はリュア=ライツェン。地獄からやって来た──って、うおう!?」
アルカは話を聞かずに、サキュバスの首を狙ってナイフで切り裂いた。だが間一髪で避けられた。むしろ、避けられて良かった。避けなきゃ裂けちゃってたからな。
「人の話聞きなさいよ……。もう、わたしはヘテロだしそういう趣味はないんだけど……」
サキュバスが指先をアルカに突き立てる。すると、アルカは目を閉じ、ストン、と床に突っ伏した。
「アルカ!」
俺はアルカに駆け寄った。
「お前、アルカに何をした!」
「淫夢を見ているだけよ。そして吸い取られた精力はそのまま私の力になるわ」
サキュバスが翼をはためかせると、その大きさが二倍になった。
「ここに天使が来なかったかしら?」
急接近され、顔が目前に迫る。紅い瞳が妖しく揺らめき、もう色んなことがどうでも良くなってきた。
「あ、そいつなら窓から飛び降りた……よ」
答える。
「あら、そうなの。ここにはいないのね」
「はい」
「分かったわ。じゃあね」
サキュバスさんは帰っていった。
えっと、アルカが寝たまんまなんだけど、どうすればいいんだよ。
最初のコメントを投稿しよう!