俺とヤンデレな彼女

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コウモリの翼を生やした女がいた。 これ、あれか。サキュバスか。 「あなたの近くに天使が来ませんでしたか?」 不用意に俺に近づいて話しかけてくる。いいのか? 俺の隣にはアルカがいるんだぞ。 「教えてくれないかしら?」 サキュバスさんは身長165センチくらい、長い金髪はストレートで、腰まで届くくらいだ。仕草一つ一つが妙に淫靡だが、容姿は普通の高校生みたいだった。服装は真っ黒なワンピース? ところどころ破れていて露出が多い。 赤くぬられた爪が俺の首筋に突き立てられる。 「ソウヤくんから離れてくれませんか」 ほら、来た。でもな、セリフと同時に手を出すのはどうかと思うんだ、アルカ。 「ふ、あなた、恋人気取り?」 サキュバスさんは左手でアルカの拳を受け止めていた! なんということだ。 サキュバスさんとアルカはお互いに飛び退いて距離を取る。アルカがポケットからナイフを取り出した。 そんなもの持ってたのか。今度叱ってやらないと。 「私の名前はリュア=ライツェン。地獄からやって来た──って、うおう!?」 アルカは話を聞かずに、サキュバスの首を狙ってナイフで切り裂いた。だが間一髪で避けられた。むしろ、避けられて良かった。避けなきゃ裂けちゃってたからな。 「人の話聞きなさいよ……。もう、わたしはヘテロだしそういう趣味はないんだけど……」 サキュバスが指先をアルカに突き立てる。すると、アルカは目を閉じ、ストン、と床に突っ伏した。 「アルカ!」 俺はアルカに駆け寄った。 「お前、アルカに何をした!」 「淫夢を見ているだけよ。そして吸い取られた精力はそのまま私の力になるわ」 サキュバスが翼をはためかせると、その大きさが二倍になった。 「ここに天使が来なかったかしら?」 急接近され、顔が目前に迫る。紅い瞳が妖しく揺らめき、もう色んなことがどうでも良くなってきた。 「あ、そいつなら窓から飛び降りた……よ」 答える。 「あら、そうなの。ここにはいないのね」 「はい」 「分かったわ。じゃあね」 サキュバスさんは帰っていった。 えっと、アルカが寝たまんまなんだけど、どうすればいいんだよ。
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