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「ごめん、小野寺。祭りの日のこと、謝らせて。
理由も言わなくてごめん。
あの日、鈴佳の犬が具合悪くて病院に行ってたんだ」
「びょう……いん……?」
「そう。それで携帯忘れて連絡できなくて。
ごめんな、ずっと待ってくれてたのに」
「そう……なの……?」
ずっと悩んでいたのに、こうやって聞くと理由はすごくあっけないものだった。
病院に行ってた? だから岩瀬さんといたの?
……何だ。九条は私と会いたくなかったから来なかったんじゃないんだ。
「この前三年に呼び出された時も、鈴佳は小野寺に謝りたいって言ってただけなんだ。
あいついつも、ちょっと間が悪いからさ」
「……なら、言ってよ……。
そんな……理由、あったなら……
私……ずっと……九条と話せなくて……
ほんとは、さみしくて……」
私を抱きしめる九条の腕の力が、よりいっそう強くなった。
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