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「ごめん。
小野寺を傷つけるだけなら、もう近づかない方がいいとかバカなこと考えてたんだ。
蓮水もいたし、俺よりあいつといた方がいいのかと思ったりもした」
「九条……」
「でも、だめだった」
九条の両手が私の顔を包み込む。
顔を上げると、そこには私の大好きな九条の笑顔があった。
温かくて真っ直ぐな、九条の笑顔。
――好き。
九条が好き。
涙がとめどなく溢れて、ぼやけて見える。
「でももう、余計なこと考えるのやめるよ。
……俺、小野寺が好きだ」
現実に起こっていることなのか理解できなくて、眩暈がする。
「ずっと前から、小野寺のことが好きだった。
俺の彼女になってください」
胸が締め付けられる。
言いたい言葉はたくさんあった。
けれど、どんな言葉でも足りない気がして、伝えられたのはたった一言だけだった。
「……私も……すき」
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