小野寺 千鶴 ―オノデラチヅル―

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兄弟、か。 ドーナツの穴を見つめながら考える。 妹の欲目抜きでも、お兄ちゃんは格好いいと思う。 背が高くて運動神経が良くて、中学高校はスポーツ少年でサッカーに励んでいる。 女の子にも当然モテてるみたいだけど、お兄ちゃんはずっとサッカーに夢中であんまり興味ないみたいだ。 それに、たまに私が差し入れを持って行ったりして、お兄ちゃんに近づくハイエナどもを牽制していた。 ほんとうはサッカー部のマネージャーをやろうとしたけれど、人手が足りていたみたいで断られてしまった。 はぁ。溜息をついて、八つ当たりみたいにドーナツに噛り付く。 口の中に砂糖のざらざらした感触が広がる。 私だって、どうかと思ってる。 自分でも、おかしいと思う。 いつまでも子供みたいに、お兄ちゃん大好き! ではやっていけないのは分かっている。 でも、しょうがないじゃないか。 お兄ちゃん以上に、格好いいと思える人がいないんだから。 .
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