☆プロローグ。

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━━ 雲一つない晴天。 心地好い爽やかな風が吹いている……。 ━━ そんな爽やかな午後に似合わない光景が広がっている。 「あーん! あーん!」 青いキャップをかぶった小さな男の子が、尻餅をついた状態で泣いている。 男の子は学校の帰りだろうか。 少し離れたとこにランドセルが転げている。 「ガルルル……。」 何と男の子の前に、ちょっと怖い顔のドーベルマンがいる。 じゃらじゃらと鎖がついているから、恐らく何処かの家から脱走してきたのであろう。 軽くピンチである。 ジリジリ……。 じわりじわりとドーベルマンは男の子へ近づく。 男の子は完全に怯え、ガタガタ震えている。 バシッ! ドーベルマンの顔面に突如、バスケットボールがぶつけられた。 「コラァ! あっち行け!」 ドーベルマンの前に一人の女の子が勇敢に立ちはだかる。 「キャイン、キャイン!」 女の子の大きな声とバスケットボールに怯んだドーベルマンは一目散に逃げていった。 「冬夢、大丈夫?」 女の子は、尻餅をついている男の子に手をかし立つのを手伝う。 「春美ちゃぁぁぁん! ごあがっだぁ~。 グスン、グスン。」 『冬夢』と呼ばれた男の子は『春美』に抱きついて泣いた。 「あたしが冬夢を守ってあげる。 だから、泣かないの。 ねっ?」 春美は冬夢をギュッと抱いて頭を撫でた。 「うん。 僕もう泣かない。」 頭を撫でられた冬夢は一生懸命笑った。 ーー冬夢を虐める奴は絶対に許さないんだから……!!ーー ━━…… あたしの名前は花形 春美(はながた はるみ)。 幼なじみの雪野 冬夢(ゆきの とむ)は泣き虫だった。 いつもガキ大将に虐められてピーピー泣くし、怖い犬に追い掛けられてピーピー泣く。 その度にあたしは、ガキ大将をぶん殴り怖い犬を追っ払った。 いつしかみんなあたしの事を『姐御』と呼ぶようになった。 冬夢はいつもあたしの後をちょこまかとついて来ていた。 だから余計にあたしが冬夢を守らなきゃ……って思ってた。 けど、ホントはあたしの方が冬夢に助けられていたんだ。 冬夢といるのが心地好くて、何か安心していた。 不思議と冬夢の前では笑顔でいれた。 あたし、冬夢の事が……。
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