序章

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体育館の周りに咲いている木の葉がゆらゆら揺れて、地面に落ちた。木の葉にとって木はとても居心地が良くて、ついついとどまってしまうものなのだろう。だが、落ちた葉がたどる道は腐るだけ。それとも…。 「卒業証書、授与」 先生の言葉に生徒たちは耳を傾け、次々と卒業証書を受け取っていく。次は僕の番だ。 「上田ゆうじ」 僕は「はい」と返事をすると、校長先生の前に移動した。校長先生はにこりと微笑みかける。僕はそれに笑顔で返す。両手を出して、それを受け取った。軽いなと思った。僕は紙だから当たり前かと笑った。 そのあとは、クラスのみんなとメッセージを書きあって、写真を撮って、僕の中学校生活は終わった。僕はバスケットボール部のときに一番仲の良かった明(あきら)と帰路を共にしていた。 「ゆうじ、中学校生活終わっちゃったな。俺高校でもバスケを続けるよ。んであったら勝負しような」 「当たり前だろ。なんか今から燃えてきたよ」 明は笑った。つられて僕も笑った。手を出してこぶしをぶつけた。これが俺たちのあいさつだって顔を見合せながらまた、笑った。また、会うときは大会でと決めた瞬間だった。
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