序章

5/5
前へ
/5ページ
次へ
「え?」 こうじはその言葉に少しいらっとした。そこまで言うのなら、取りましょう先輩と心の中で笑った。 「じゃあ、お言葉に甘え、て!」 その瞬間、こうじは裸足で駈け出した。先輩が向かってくる。それを阻む、阻む、阻む!先輩はくるくる回ると距離をとった。 「ひょー、さすが名門中学の奴だけある。ガードがすげえや」 「こっちもそれだけのプライドがあるんで…!」 だが、こうじは内心焦っていた。片手なのに取れる気がしない。と感じていた。それは、先輩と自分の経験年数か、はたまた技術力の差が不安をあおるのか、こうじにはわからなかった。 「ぼーっとすんなよ。勝負だぞこら」 目の前に先輩がいた。やばい抜かれる。 「はー…、やっぱまだまだひよっこだなあ。まだ生まれてもないかも」 「何を…」 「つまんないって言ってんだよ。お前」 鋭い眼光ぞくっとした。こうじは硬直した。その一瞬の間に先輩はシュートをうった。ざしゅっと乾いた紐の音がした。これが、大分県立東ヶ丘高校、バスケットボール部の実力。こうじの自信がぐらついた。 「俺ん名前はすぐる。さっさと入部しろ」 ひょろひょろっと手を仰ぐと、口の悪いせんぱいは言った。続いて大男も「俺は、渡辺トモ、。よろしくな」
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加