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例えばだ。目の前に一切れのパンがあったとする。お前は雪山で遭難して食料も底を尽き、餓えている。救助は計算上、あと数日で来る。もしこのパンを食うのならば、恐らく救助が来るまで生き延びれるだろう。だが助けが遅れて来る可能性だってある、食べても助からないかもしれない。
それに加えてお前の隣には親友が居たとする。ソイツはお前より衰弱していて、このパンを食べさせなければ今夜にも命の灯火を消すだろう。パンを与えれば親友は少なくとも短い間だが命を長らえる事を可能とし、餓えと言う苦しみから解放される。救助が来る時まで生きていれる可能性も生まれる。
お前は一体どのような選択をする?パンを餓えている親友の目の前で食し、目の前の命を犠牲にして自分は生き残れる可能性を少しでも増やすか。
それとも、パンを与えて親友に生きるチャンスを与え、自らの生存確率を下げるのか。助けるのを諦めて親友を殺し、苦しみから救済するのもお前の自由だ。
…こんな状況で、親友にパンを与えると言う道徳的、かつ自己満足な行動を取る人間を聖人と呼ぶのならば――俺は聖人とやらにはなれないな。
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