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真下、とは言ってもただの草の生えていない大地があるだけだ。この看板が意味するところは、かつてこの下に、村が存在したと言う事なのだろうか。ならば看板が恐ろしく劣化しているのも頷ける。村が存在するのなら、これ程まで看板が朽ちる訳が無いからだ。だが、そうだとしても、ここにその様な看板を立てる必要があるのだろうか。ふとエルは何かに気付き、呟く。
「…何故ここには草が生えていない?」
この国の一帯を覆い尽くす程繁殖力の高い雑草。それがこの一角だけ、一本も生えていない。何を思ったのかエルは突然しゃがみ込み、腰に差した剣の鞘で地面を掘り始めた。それを見て不審に思ったアリアが思わず声をかけた。
「あの…何をやってるんですか?」
その問いかけには答えず、黙々と土を掘るエル。聞こえなかったのかと思い、もうアリアが一度声をかけようとした時、エルの動きが止まった。
「…あった、村だ。」
言い、掘った地面を指差すエル。アリアがそこを覗くと、そこには鉄製の板が、地中より顔を出していた。よく見てみると、どうやらそれは蓋の様らしい。赤く塗られたバルブが付いている。躊躇いもなくエルはそれを回すと、鈍い金属の音と同時に何かが開く音が聞こえた。恐らく解錠の音だったのだろう、エルが蓋を持ち上げると中には暗く、深い穴と垂れ下がる縄梯子が見えた。
軽く足を引っ掛けて強度を確認すると、アリアが何かを言う前に中へと潜り始めた。
「な、何やってるんです!中に魔物が居て、既に村人が喰われていたらどうするんですか!魔物の巣窟だったら…」
それを聞いてエルは自信満々に言った。
「それは、無い。」
加えてこう言った。
「死臭がしないからな。」
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