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西の外れにある岩山に漆黒の獅子は降り立つ
風を遮る物など何もないただただ高い岩山では平地よりも寒さを感じる
かつて同種達と暮らしていた場所はここよりも岩肌が剥き出しになっていない もっと南の山だった気がするなと
獅子は自身の立つ岩の地面を見つめながら思う
「あいつは変な奴だな」
"あいつ"とは深紅の少年の事だろう…
「花が好きだと言ってみたり 友になろうと言い出したり…全く変な奴だ」
そんな事をぶつぶつと言う漆黒の獅子
だが 言葉とは裏腹に獅子の表情は明るい
「あいつは見てて飽きないな なぜだろう?もっと話してみたいという気持ちになるのは…?」
そんな漆黒の獅子の疑問に答える者など居ない
獅子は一人きりなのだから
聞こえてくるのは風が吹き荒れる虚しく冷たい音だけ
獅子の心にも似たような風が吹いていた
「なぜだろうな?あいつと会い 別れると心が渇く感覚だ」
漆黒の獅子は誰も答える事のない自身の疑問を口にしながら 寝床にしている洞窟の奥へと姿を消した
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