1-1 深紅の魔王子

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「父様」 魔王の間の扉を開き 深紅の少年は中へと歩みを進める 魔王の間は外の砂だらけの殺風景とは違い 床や柱は無機質な艶を放つ白い石で作られており 金や銀の豪華な置物が置いてある 全て人間界から奪ってきた物や素材で作ったと昔 父様が言っていたなと深紅の少年は ふと思い出す 少年の立つ扉から広々と 取られた空間のその先に数段の段差があり その上に目映い金で出来た縁の椅子に少年の父… 魔王は 頭 首 腕 手首 指 自身のありとあらゆる部分を豪華な装飾品で飾り立て どっかりと座っていた 「王子よ 随分と遅かったな」 そう言う魔王の座る椅子の下の床には死体が一つ転がっていた 死体には首が無く 切られたところからは少年の髪や瞳のような深紅の血がしたたり流れ 白い石の上に赤い血溜まりを作っていた 「父様…この死体は…?」 少年は嫌な予感を感じていた 「あぁ…これか…」 魔王は死体を もう物のように"これ"と呼び 足で死体の背中を踏み付け言葉を続ける 「王子を呼びに行かせた者だ "これ"が戻ってきてから王子が来るまで かなり時間があったために 俺はこいつの言葉を嘘だと判断した 王子を見つけた すぐに来る と言う嘘を俺は許せなかったから殺した それだけのことだ」 踏み付けていた足を上げ死体を思いきり蹴り飛ばす  死体の四肢は生きている時には有り得ない方向を向き 少年の前に落下する 死体の肌の色は褐色 片方の手の平はあの花を潰した時に付着した液体で僅かに緑色になっていた 死体は紛れもなく先程 少年を呼びに来た魔の者だった 「ひっ…!」 少年は声にならない悲鳴を上げる 「ガッハッハ!王子よ 何を情けない声を出しているのだ?」 恐怖に歪む深紅の少年の表情を見て魔王は豪快に笑い出す
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