1-1 深紅の魔王子

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「人間の父は子を慈しみ 守る……か」 少年は自身の部屋で本を読んでいた 少年は人間の事が記された本を好んでよく読んでいた 事実 少年が山積みにした本は全て人間に関係した本ばかり 「僕の父様とは違うなぁ…」 少年はぽつりと言うと読んでいた本を閉じ また別の本を手に取りぱらぱらと捲る 「"魔物を倒すために"…?」 少年の視線はあるタイトルで釘付けになった 「"魔物を倒すためには 首を切り落とすか 心の臓を貫くべし それ以外の箇所では やがて治癒をし攻撃の意味を成さない"…」 少年はその記された文章を口に出して読み自身の心臓に手を当てる 首と心臓以外では死なない… 普通の体ではない… 少年は自身の尖り始めたばかりの爪を手の甲に立てギリリと傷を付ける 「痛い…」 目に涙を溜めながら痛みに耐え 手の甲の傷から少しの血が出てくるのを少年はじっと見つめていた 傷はみるみるうちに閉じ 傷跡も残らない程に綺麗に治癒してしまった 人間では有り得ない光景 少年はこの光景に自身も魔物なのだと再確認してしまい落胆する 「僕は…争いや殺しを父様や他の魔物たちのように好めない だけど体は魔物… 僕は…僕は…」 手の甲の傷は癒えて無くなったのに 変わりに心にぱかりと塞がらない穴の様なものが開くのを 少年は一人感じていた
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