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魔の者は大人になるにつれ 強靭過ぎる肉体と 並外れた腕力を身に付けながら成長するが
深紅の少年はまだそんな力が身に付く程 歳を重ねていない
「どうやって戦えば良いのか 分からない…」
そんな少年の恐怖と戸惑いの気持ちなんてお構い無しに薄汚い魔獣は 牙を剥き出しにし さっきよりも低く大きく威嚇しながら少年への距離を縮めていく
薄汚い魔獣が一歩少年に近づけば 深紅の少年は一歩後退り
薄汚い魔獣がまた一歩少年に近づけば 深紅の少年もまた一歩後退る
それを何度か繰り返した時 薄汚い魔獣の一匹が口を最大まで開き よだれを撒き散らしながら とうとう少年に飛び掛かる
「わぁぁぁ!!」
森の隅に居ても聞こえるのではないかと思うくらいの深紅の少年の大きな悲鳴
「痛いよ!離せえぇぇ!」
深紅の少年の叫びも虚しく、薄汚い魔獣は少年の細い白い腕に自身の牙を食い込ませ離さない
少年が噛み付いた薄汚い魔獣を振り払おうと腕を振れば振るほど 牙は食い込んでいき 腕はミシミシと嫌な音を立てる
腕からは赤い…紅い血
ボタボタと少年の周りに雨のように落ちていく
薄汚い魔獣の口は深紅の少年の血で真っ赤に染まっていた
───グルル…
───グルル…
深紅の少年が痛みから逃れようと暴れ 撒き散らした血の匂いに誘われ森の奥から 薄汚い魔獣が次々と姿を現し
気が付けば百近くの数の薄汚い魔獣が少年を取り囲んでいた
「助けてぇぇ!」
深紅の少年が声を張り上げるのと同時に
さらに数頭の薄汚い魔獣が少年に飛び掛かろうと走り出す
もう駄目だ
少年は自身の"死"を覚悟し 目をきつく瞑る
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