8人が本棚に入れています
本棚に追加
───ビシィ
────ギャウンッ
────キャンッ
無数の牙が少年を捕える寸前に鞭で叩くような音と獣のか細い悲鳴が聞こえる
死を覚悟し 目を強く瞑った少年は感じるはずの痛みを体に感じず
恐る恐る瞼を開くと
少年の目の前には夜空の様な美しい漆黒の獅子が深紅の少年に背を向け 薄汚い魔物の前に立ちはだかる光景が目に飛び込んでくる
「黒獅子!」
深紅の少年は満面の笑顔で獅子を呼ぶ
今の少年にとって漆黒の獅子は救世主そのもの
漆黒の獅子はちらりと顔を少年に向け 最小限の目線を送ると
「お前の趣味は情けない声を張り上げることなのか?」
そう言いながら地面すれすれまで長さがある 自身の優美に垂れ下がった尻尾を左右に大きく振る
「黒獅子!尻尾から血が出ているじゃないか…!」
少年は獅子の尻尾の先から どす黒い血が出ている事に気が付く
少年がオロオロと漆黒の獅子を本気で心配するが 獅子は余裕にニタリと笑って見せる
「フンッ!
俺様の血はこんな汚い色ではない これは薄汚いあいつらの血だ
俺様の尾の先の毛は刺の様に固く鋭くできるのだ
一振りすれば あんな下等な魔物など 即死だ」
漆黒の獅子はそう言うと 自身の尾の先の毛束を何本もの太い刺の塊にし 自慢気に少年に見せ付ける
最初のコメントを投稿しよう!