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「魔王子様!」
その声に深紅の髪と瞳の少年が振り返る
美しい紅が少年の肌の白さを際立たせている
人の歳で言えば十三か十四か…
大人の肩程の身長と まだあどけない表情がそのくらいの歳なのだと思わせる
「またここにいらしたのですか?魔王様がお探しです!」
言葉を荒立てて発する魔の者の肌は褐色 髪や瞳はくすんだ赤
お世辞にも美しい容姿とは言い難い
深紅の少年は大きな瞳でその魔の者を捕え 無表情に褐色を見上げる
「そんなに怒鳴らなくても聞こえてるよ
…早く僕を連れて行かないと父様に殺されてしまうから怒るの?父様は気がとても短いから…」
「分かっているなら なぜ大人しくお部屋に居て下さらないのですか?
毎日毎日 探す度に魔王子様はこの場所におられて…ここに何かあるのですか?」
褐色の魔の者にそう言われ 深紅の少年はそれまで褐色と合わせていた視線を不自然に外し 何かを隠す様に後ずさる
見れば深紅の少年の手には水の入った小さな皮の袋が握られている
ますます ここで深紅の少年が何をしていたかが気になった褐色の魔の者は 少年の後ろを素早く覗く
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