1-1 深紅の魔王子

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「魔王子様…なぜ我々魔物が赤い髪 赤い瞳をしているのかご存知ですか?」 「……いや」 「我々は戦いを好み血を好む種族 我々の赤い髪と瞳はこれまで殺してきた人間や生き物 時には神の怨念だと言われております 魔王子様は種族の中でも一際美しい深紅の髪と瞳をお持ちです それこそ本物の血の様な紅 もしかすると魔王子様は特に強くその怨念がついて 生を受けたのかもしれませんな」 怨念 褐色の魔の者が発したその言葉に少年は先程までの勢いが無くなる 「魔王子様…あなたはじき 全ての魔の者の上に立ち まとめあげる存在なのです 花など美しいと思う心など捨てて下さい 我ら一族の求める物は争いと血! それのみでございます」 少年は下を向き 褐色の魔の者には見えない様に悲しそうな表情を浮かべる 「魔王様がお待ちです お話はこの辺で切り上げそろそろ向かわなければ 本当に私は殺されてしまいます 私は先に参ります 魔王子様もお早く来てくださいますように…」 褐色の魔の者は皮の袋をその場に落とし 深紅の少年の悲しみの表情に気付かないまま横を通り過ぎ 行ってしまった 他に誰も居なくなったこの場所で少年は一人呟く 「戦いや争いは恐ろしい 血の匂いはおぞましく嫌な匂いだ なぜ花を美しいと思う心を捨てなければいけないのか… なぜ…僕は魔の一族として生を受けたのか?」 少年は尻餅をつき 地についた両方の手の平で拳を作り 地の砂を握り込む 「せっかく俺様が持ってきてやった花を簡単に見つかり潰されてしまうなんてな!」 下を向きぶつぶつと呟いていた少年の頭の上から 大きな 一言一言はっきりと聞こえる声が降ってくる
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