1-1 深紅の魔王子

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漆黒の獅子が深紅の少年に背を向けてさっき畳んだばかりの二本の翼を広げ 今にも飛び立とうとする 「待って!」 少年は獅子を呼び止める 漆黒の獅子はゆっくりと振り返り一言 「何だ?我が儘な魔王子様よ」 「…名前を…君の名前を教えてよ!」 少年は笑顔で漆黒の獅子に言う 「"友"になろう! 人間は友という存在を作り喜びを分かち合い 互いの悲しみを共有し 力を合わせ生きていくらしいんだ! 僕は君とそんな関係を築きたい!」 獅子は一瞬左の目を大きく開き 驚きの表情を見せた後 少年の発言をフンッと鼻で笑い飛ばす 「花同様に城の書物庫の本で得た知識か? 友ねぇ…俺様と?止めておけ 友が欲しいなら他の者に当たれ」 「…他の魔族の者なんかと友になれるはずがない!考える事は争いや殺しのことばかり 自分の欲ばかりを優先させてしまう者達となんて 友になれるはずがない! でも君は違う 君となら友になれる!」 漆黒の獅子は少年の言葉に口を大きく開け「アッハッハ」と大地を揺らす程の声で笑うと 一歩一歩ゆっくりと少年に近づき自身の顔を少年の目の前に突き出す 「俺様を誤解しすぎだ 魔王子様 俺様はお前が思うように心が清らかじゃない ただの気まぐれで魔王子様に付き合っただけさ」 ニタリと少年の目の前で笑うと その鋭すぎる歯が覗く 「気まぐれでも…!」 ───グオォッ! 少年が言葉を発した瞬間 漆黒の獅子は深紅を睨み 口の上の皮膚を上げ犬歯を剥き出しにし目の前の幼い少年を獣の声で威嚇する その殺気立った漆黒の獅子の雰囲気と威嚇に少年の腰は抜け 膝は笑い地面に座り込んだまま立ち上がれなくなってしまった 「次は俺様の気まぐれでお前を殺すかもしれないぞ?」 「き…君はそんな事はしない…!」 「フンッ!その発言は俺様の軽い威嚇で腰を抜かし 声が上ずる事が無くなってからしろ!」 面白いものを見たと言いたげな表情で再び少年に背を向ける漆黒の獅子
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