8人が本棚に入れています
本棚に追加
じいちゃんが死んだ。
唯一の肉親だった。
父ちゃんと母ちゃんは、俺がガキの頃に事故で死んだ(らしい)。
孤児になった俺を引き取り、19歳まで育ててくれて、大学にまで行かせてくれたじいちゃん。
尊敬していた。
将来はじいちゃんみたいな人間になりたいとずっと思っていた。
俺に色々なことを教えてくれた、厳しいけれど優しいじいちゃん。
大好きだった。
そんなじいちゃんが死んだ。
死因は単なる老衰。
じいちゃん、結構齢往ってたしな。
まァそこまではよくある話。
問題はここからだ。
じいちゃんは若い頃かなりのやり手だったらしく、かなりの額の金を銀行に預けていたらしい。
正直俺はそんなこと全く知らなかったけど、親戚連中はみんな知っていたようだ。
じいちゃんが死んで数日も経たない内に親戚共がこぞって家に押し掛け、じいちゃんの遺書を血眼になって探し始めたのだ。
だが、じいちゃんの遺書は見つからなかった。
貪欲な親戚達は俺が遺書を隠してじいちゃんの遺産を独り占めしようとしていると考え、俺に疑いの目を向けてきた。
無論俺はそんなことしていない。
だから俺は自分でじいちゃんの遺書を探すことにした。
俺自身の疑いを晴らすためでもあるが、何よりこれ以上俺とじいちゃんの家を荒らされたくなかった。
だけど只の平凡な大学生である俺が、そう簡単に見つけられるとも思わなかった。(大勢の親戚共が血眼になってすら見つけられなかったぐらいだし)
だから俺は探偵を雇うことにした。
最近大学やネットで話題になっている探偵事務所。
大きな事件を解決したって話は聞いたことないけど、今の俺は藁にも縋る思いだった。
じいちゃん。
人に頼ることはみっともないことじゃないよな?
受けた恩をそれなりの誠意で返せば、それはみっともないことじゃないって、じいちゃんも言ってたよな?
今の俺がどこまで受けた恩を返せるか分からないけど、俺は他人を頼ろうと思う。
じいちゃん。
俺は別にじいちゃんの遺産なんか欲しくないよ。
でも俺が、俺とじいちゃんが一緒に暮らした、俺たちの家を、俺はもう荒らされたくないんだ――…。
_
最初のコメントを投稿しよう!