「短編小説1」

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中からは、手術着を着た人が出てきて花奈さんの両親の方へと向かった。 聞きにくかったけど、一言だけはっきりと耳に入ってきて残った。 残念ですが… そんな声が、頭の中で繰り返された。 おばさんは泣き崩れてしまい、おじさんに支えられないと立っていられなかった。 母さんも、僕も泣いていた。 後から聞いたけど、母さんの携帯に泣きながらおばさんから連絡があったらしく、急いで帰ってきたとか。 原因もこのとき初めて聞いた。 信号無視による轢き逃げ。 捕まるのも時間の問題だろう。 そして、ちょうど僕を探しに行こうとしたときに僕が帰ってきて、そのまま病院に来た。 母さんと僕は家に帰ってきた。 何も食べる気にもなれず、真っ直ぐ自分の部屋に行き、また泣いてしまった。 母さんも何も言って来なかったから、同じくらい悲しんでるんだと思う。 自分の娘のように可愛がってたみたいだったし。 花奈さんも、もう一人お母さんができたみたいって喜んで言ってを聞いたことがある。 そのときの事が、昨日の事のように思い出されていく。
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