プロローグ

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 神様って信じるか?  俺は信じていない。何でかって? 目に見えないからに決まっている。そんな不確かなものを信じるほど、高校生も暇じゃないんだ。  進学校に通っている俺は、この4月から晴れて2年生となった。大学進学を視野に入れた教育プログラムはそこそこに厳しく、毎日出る課題に悲鳴をあげている。そんな中で俺の母親は、 「お勉強? そんなのがんばらなくていいわよー。」  なんて発言をしてくるから驚きだ。母親いわく、 「おバカな方が可愛げがあるでしょ?」  だそうだ。父親も、口出しをしてこないところをみると、母親の教育方針に文句はないようだ。そんな家庭内ゆとり教育をする二人が、口を酸っぱくして言い聞かせてくるのが、 「神様を信じなさい。」  これだ。  俺の家、河上神社は、今どきの神社には珍しく、普通の日でも多くの参拝者が訪れる。それこそ正月ともなれば、境内が人であふれかえり、歩くことすら困難となる。  だが、参拝客の何割が神様の存在を信じているのだろうか。初詣といったって、ただのイベントでしかないと俺は思っている。考えてもみろ、神様に祈って願いがかなったことなんてあるか? 俺はない。体験してもいないものを信じろなんて、無理な話だ。  神社なんて継ぐものか。俺はそこそこの大学に入って、そこそこの企業に就職し、そこそこ幸せな家庭を築くという人生プランを立てている。親の言いなりなんてまっぴらだ。反抗期とよばれようが、そこだけは譲れない。  俺は神様なんて信じない。
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