Past time regret

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奇跡的に頭は無事だった。そのかわり、熱で荊状に変形した巨大な鉄棒が、お兄ちゃんの胸を、お腹を突き破って私をがんじがらめに地面に縫い付けていた。 お兄ちゃんがいなかったら、私はこの枝分かれした鉄棒達にみじん切りにされていたかもしれない。 爆発の瞬間、とっさに握ったお兄ちゃんの右手と一緒に、私の左手は瓦礫によって二次元に圧縮されたみたいにぺちゃんこになっていた。 膨らんだシャボン玉が弾けるように儚く、おれんじ色の火球がぱっと輝いた。気付いた時には、暗い瓦礫の底で、お兄ちゃんの串刺しにされた体が僅かに差し込む明りの中で、赤く、私の上に覆いかぶさっていた。 守れなくてごめん。彩(かなで)。 声を聞いたわけじゃなかった。口元だけが動いていた。ひゅーひゅーと喉笛が鳴っているだけだった。それでも、そういっているのが分かった。 やめて。そう言いたくて、ふるふるとぎこちなく首を振った。耐えられなくて涙がこぼれた。 お腹に力を込めた。剥ぎ取りたくなるような激痛が瞬間、生じた。それでも、それよりも、言いたいことがあった。 「こんどは、ちゃんと、いこ…うね?」 お兄ちゃんも、一緒だよ せめて笑ってみせて、そう言った。それからお兄ちゃんはわずかにうなずいて、そして意識を失った。 私たちを貫く巨大な鉄棒が、その時はまだ、それでも私たち二人をつなぎとめていた。
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