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「リルだってー、塩焼されたサンマみたいな目ぇしてるじゃねぇですかー」
「せめて味噌煮とは言えないのー、アル君」
「リルさんそりゃサバの間違いだ」
「いいじゃねぇーかアル。んなもん見た目じゃ誰もわかんねぇよ」
それから突如としてはっはっはっ!と奇声を上げるアル。
「分からないのは針さんくらいでさぁー。サバとサンマなんて、チワワとブルドックくらい違いますぜ」
「どっちも可愛いじゃねぇか」
そうして突如として会話が途絶える。……やるか?どちらからともなく発せられたその言葉は、見事なハーモニーを残して換気扇の中に吸い込まれた。
「ちょっとあなたたち」
そうして、針の穴を通すように鋭く、地獄の底から地獄へ引きずり込もうとする声音が、部屋の中で凛と響いた。
「仕事中よ。口を動かす暇があったら仕事増やしてもいいのよ」
ビクッ、と空気が凍りついた。埃っぽい事務所の中で換気扇の駆動するバス低音の上に、PCの甲高い駆動音が不協和音となって凍えた空気を震わせた。
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