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目を凝らし狙撃者の有無を確、かめていた仙崎は、倒れた女性に一瞬目を向けた時に、感じた違和感の正体に気付き、視線をそちらへ向けた。
「ハッハッハッハッ・・・」
「・・・」
向けた目の前に、長い舌を垂らし荒い息を吐く、ゴールデンレトリーバーの顔が有った。
「なっ!?」
驚きに声が出そうになった、仙崎の顔を、大きな舌が掬(すく)い上げる様に、ひと舐(な)めする。
「ブハッ!リードを手放してたのか?」
倒れた女性に視線を向けた時、傍らに居た筈の犬の存在が、無かった理由を、その瞬間仙崎は理解した。
「コラッ!御主人様を見捨てて、君は何
をしておるのだッ!」
「ウォン!ハッハッハッ・・・」
今にも仙崎に飛び付きそうな、勢いの犬に、仙崎はこんな状況で有りながら、目尻を下げてお小言を言った。
犬が仙崎の言葉に反応し、野太い声で返事をする。
「アトム、アトム何処?・・・戻ってら
っしゃい!」
若い女性の呼ぶ声に、犬は瞬時に反応し頭を回(めぐ)らす。
仙崎もセーフティーレバーをオンにして、拳銃を腰に捩(ねじ)込み、声がした方へと視線を向けた。
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