プロローグ

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事件はその時起こったのである。 それは、おばあさんが川で洗濯を済ませ、年甲斐無く裾を捲りあげ、水辺で遊んでいた時である。 それはまさに突然であった。 鉄砲水だ。 容赦無く迫る水流がおばあさんを今にも飲み込もうかと襲い掛かる。 「死ぬ!!」 おばあさんは瞬時にそう思ったと、後に語る。 その時であった。 全ての物がスローモーションで、おばあさんの瞳に写る。 それは更に遅く、遅くなっていく。 そして、全ての物が停止した。 『時』が止まったのだ。 おばあさんだけを残して。 おばあさんは理解仕切れていなかった。 だが、彼女は気付いた。 河原に桃が落ちている事に。
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