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「捕まえた」
倒れこんできた彼女を抱きとめて、ぎゅっと力を込めると彼女の柔らかさを全身に感じた。
鼻孔を掠める彼女の香りにそそられて、首筋に顔を埋めると悪戯心が芽生え、舌先を這わせる。
「んん……っ! と、きなり、さ、ンッ」
そのまま鎖骨をペロリと舐めると、予想以上の反応が返ってきた。
それが嬉しくて調子に乗って、服の裾から手を差し入れようとしたその時―――
ジリリリリリン、ジリリリリリン
黒電話の着メロが鳴り響いた。
「電話ッ、出た方が、いいんじゃないですかっ?」
紅潮した頬で、艶っぽい表情を浮かべながら彼女がそんなことを言う。
随分と余裕なその発言に些か不満を抱きつつも、しつこく鳴っている電話にため息をついた。
チッ―――
舌打ちしそうになるのを抑え、立ち上がって携帯電話に手を伸ばす。
「―――ハイ」
不機嫌な声はもちろん隠さずに出てやった。
相手はだって
「ともちゃーん、あけおめー」
長井だったからだ。
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