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「で、要件は?」
ベッドに腰掛けて、ふーっと息を吐きながら尋ねた。
安西が萌優に聞かせたくない……なんて言うなんて、変だ。
まだ安西は会ったことがない。
妊娠中の彼女は、飲み会などには1度も来てないから会う機会がなかったのだ。
長井が2児の父親になるだなんてぞっとするが……
いや、安西が居るなら大丈夫か。
なんてどうでもいいことが過った。
「あのさー。恵なんだけど」
「……あぁ」
「あれから、会った?」
「いや……」
さすがに言葉を濁してしまった。
後腐れなんて何もない。
ただ、必死で彼女に行くなとしがみ付いて、振り払われて。
そのままになっている恵と俺。
気持ちの消化とは裏腹に、どこかしこりを残している気がしているのは確かだ。
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