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「アル、大丈夫?」
そんな運命に金髪少年は辛そうな笑顔を繰り出すと
「優しいな、運命。本当に……誰かさんとは大違いだよ。」
と呟いた。
「誰かさんとは誰よ?アル!」
さっきよりも小声で言った筈のアルトだが、どうやら地獄耳のリクイスには聞こえていた様だ。彼は只でさえ走った事で汗だくなのに更に冷や汗をかく
代わりに無言で運命に向かって自慢の金色の瞳を向けてくる。僕にどうしろとアルト!?
「ま、まぁリク。皆揃った事だし、今日は何しようか?」
「そうねぇ、今日は少しだけ買い物がしたいから二人共、私に付き合ってちょうだい!」
「えっ!?」と二人の声が重なると、「嫌なの?」と威圧感を込めて言うリクイス様。何とか話は逸らしたけど、次の話題がこんな内容だったか。
リクイスも、もう少し性格が柔らかければ髪色も明るい桃色に、青い瞳が多くの男子を魅了するのだろうが、そんなおめでたい話は一度も聞いた事はない
学園でも厳しいお嬢様キャラで定着しているのだろう。故にここの反応は……。
「いえ、是非とも……お願いします。」
リクイスに反論は許されない。反論したら最期、どんな恐怖が待っているのか……。
「よろしい!」
と三人の会話はいつもこんな内容だ。元気満々なリクイスと振り回されるアルト。そして、そんなアルトを励ます運命。
リクイスの提案で三人は商店街へと歩き出した。やはり観光地として有名なターミナルだ。
海に合わせた明るい色の布を張った店々が連なり、活気ある商店街を作り出していた。多分、リクイスの事だからこの全てを回るとか言うんだろうな……
「よし、じゃあ片っ端からお店に入っていくわよ!!」
やっぱりか……。分かっていても実際言われたら、目の前の現実から逃げたくなる。そんな儚い願いも虚しくリクイスは店へと軽快に歩き出した。
元気満々なリクイスの後ろに続いて生気を無くした死神二人が来店。
それからは、本当に〝大変〟の一言だった。女の子は皆こうなのだろうか?別に買う訳じゃなくても目に入った服を眺めては悩み、比べ、店員を巻き込んで話して数分後には買わない。
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