序章《平和な日常》

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 いつか予想にもしなかった事が起きた場合、私が死んでしまった場合。運命を守ってくれるのは突き詰める所、運命自身でしかないのだ。  だから運命には厳しくとも自我が目覚めた頃から剣術を叩き込んできた。毎日、朝昼晩……毎日、毎日辛くても運命は諦める事はしなかった  お陰で十四歳になった今では、年齢に似合わない凛々しさを持ち、剣術もおおよそ習得した。運命は頑張って来たと思う。  生まれてからこの方母親の顔も見る事は出来ずに父親一人に厳しくも優しく育てられてきた。それでも運命は一度も自分の生活や不満を漏らした事はない  もしかしたら運命には分かっていたのかも知れない。母親が自分を生んだ事で死んだ事を、そして片親で育てる苦労を……  だからこそ毎日の厳しい訓練にも一切文句は言わず耐えてきたのかも知れない。真相は運命にしか分からないが、でも普通なら不満の一つが出てもおかしくない。運命は本当に男の子だ  だからこそ訓練の時と普通の生活とを、きちんと分けて甘やかす時は存分に甘やかしてきた。父親としての優しさを出来る限りで伝えてきたつもりだ――  そんな事を考えていると今日の昼食の料理が出来上がった。今日は先程、運命が穫ってきてくれた小魚に軽く塩を振ってただ焼いた男料理だが……。昨日作ったカレーが残っていたのでそれに救われた。  という訳で今日の昼食は小魚の姿焼きと昨日の残りカレーだ。先程から魚が焼ける芳ばしい香りに待ちきれないのか?家のテーブルに座った運命は鼻歌を歌いながら楽しみにしている。
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