序章《平和な日常》

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「うん、最近は色々と忙しくて誕生日なんか忘れてた!」  運命がいう『忙しい』と言うのは恐らく森の中で遊んだり、街中に遊びに行ったりとそんな内容だろう。無理もない……  つい一昨年まで運命には自分の安全を確保する為に人前に出る事を禁じていたのだから。でも左目を隠す眼帯をプレゼントしたのをきっかけに運命は積極的に人前へ出る様になった。  それまではこの家とちょっとした庭先までしか行動範囲が無かった運命にとって、外の世界は実に魅力的だった事だろう。  最近では少なからず歳の近い遊び友達が出来た様で、毎晩の夕食で楽しそうに語っている。このまま何もなく幸せに育って欲しいとどんなに望んだ事か。 「そうか、じゃあ今年はお父さんがプレゼントを決めていいか?」  エルがそう言うと、運命は口元に優しい笑みを含んで笑った。何がおかしいのか?エルには全く理解出来なかったが運命がそれを教えてくれた 「〝今年は〟じゃなくて 〝今年も〟でしょ!」  どうやら自分で墓穴を掘ってしまったらしい。今までは運命の要望も聞かずにエル個人の考えでプレゼントを買っていたから今回はそこを上手く突かれた 「そうだったな、すまない。 じゃあ今回はお父さんだけじゃなくて運命の意見も聞くよ」  すると運命は困った様な仕草で何やら考え込んでいる。今度は一体何だろうか? 「いや、実は色々と考えたんだけど特別欲しい物はなかった。それに……」  頬を掻きながら視線を逸らす運命。それに頬も少しだけ赤く染まっている……どうしたのだろう?私に言い辛い事なのか?
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