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八月三十日――
朝の目覚めがこんなにも清々しく訪れたのは、いつ頃以来の事だろうか?窓から差し込む優しい太陽、小鳥の鳴くさえずりが平和な今日の訪れを知らせる
いい朝だ――
そんな事を考えながらエルは自室のベッドの中で呑気な欠伸をした。思えば愛する一人息子の為に街中を駆けずり回ったのは昨日の事だが、もう遙か遠い昔の記憶の様な気がする――
ベッドで寝返りを打ちながら枕元に置いてある長方形の小さな箱が目に入る。綺麗なリボンに巻かれて華やかな存在感を醸し出す箱は、昨日エルが買った運命への誕生日プレゼントだ。
十五歳と言う『立志』の年に相応しいプレゼントを悩みに悩んで選び抜いたのは、マテリアのネックレスだ。
マテリアとはいわゆるダイヤやルビーの様な《鉱石》の一つで多様な種類があり多種多彩な色の光を放っている石だ。
そしてマテリアは告白やプロポーズ、成人の祝いなど特別な行事によく用いられ各々に込められた特別な意味合いがある。
今回エルが買ったマテリアはひし形をした新緑色の光を放つ『安らぎ』のマテリアだ。これにはその名の通り《安らぎ・豊富・成長》の意味が込められる
十五歳まで不自由な環境でも健やかに育ってくれた運命への感謝と、これからも『安らぎ』の守護が訪れる様にという願いを込めて買ったマテリア。
それともう一つ。マテリアを父親から子供に与えると言う行為は、古来から『子供の成長を認める』と言う意味で広く知られている
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