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でも今、こうしてターミナルに来たのは花火を見る為じゃない。太陽が元気に顔を覗かせている今は、最近になって出来た数少ない友達に会いに来たのだ、正確には〝遊びに来た〟だが
待ち合わせ場所は、十二時にターミナル広場の噴水に集合。今は十一時半、勿論友達の姿はない。少し早く来すぎたかな?
運命は広間の中央にある噴水の縁に淋しく座ると脚を交互にパタパタと動かして暇を潰す。時折、後ろの噴水を見ると白い石像の小便小僧が爽快な顔して用を足していた。綺麗な弧を描く清水、呑気なものだな……。
そしてターミナル広場を行き交う通行人の目が痛い。それは多分、真っ黒なスータンに左目を黒い眼帯で隠している運命に向けたものだが、別にそんな事は気にしない事にした。
正直、もう慣れた。通行人が運命に軽蔑の視線や哀れみの念を向けて来た所で運命は全く気にしない。他人に何が分かる?
生まれた時から左目は見えなかったんだ……。〝黒い模様〟が目の中にあるから何かの病気かと思ったけどお父さんは大丈夫だと言っていた。
「それは生まれつきだから、恥じる事はないんだよ?運命。」
そう言ってくれたから。誰に何を言われても気にしない事にした。お父さんさえ居てくれさえすれば……
「おーい、運命~!!」
そんな事を考えていると遠くからこちらに向かって手を振り駆け寄って来る少女が目に入る。肩まで伸びた桃色の髪に如何にも女の子、可愛いらしい制服を着込みながら駆けてくる。
彼女の名前は『リクイス』、名門に通う一年生。運命と同い年の十五歳にして成績、人材共に優れた者のみが入学を許される名門学園の中等部に所属する。
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