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「アルは運命も知っての通り、運動音痴でしょ?だからほら」
そう言ってリクイスが今先程来た道を指さすと、丁度ここからでも姿を確認できる位まで目視できる距離にアルトが居た。
にしても、人は走る時あんなにも大きく左右に揺れるだろうか?今のアルトは正しく台風の暴風をまともに食らったカカシの様に、ゆらゆらと揺れている
外見は至って普通、いわゆる〝イケメン〟の部類に入るアルトだが、何せ体力が無いのと、リクイスと一緒にいる所から学園でも距離を置かれる存在だ。
そんな色々と勿体無い草食系イケメンを心配して
「アル、大丈夫?」
とリクイスに聞くと
「大丈夫、大丈夫!!」
と、二つ返事が返ってくる。多分リクイスが大丈夫と言うのなら大丈夫なんだろう。今までもそうだったしな……。
そうこうしている内にアルトが二人の前まで着くと、瓦礫の様にその場に崩れた。それを目撃した周りの通行人の視線が一気に集まり、皆心配するが……
「皆さんすいません。この子、いつもの貧血気味なだけなんで心配要りません!!」
と言うと、通行人は名残惜しくも各々が元の通り歩き出した。流石はリクイスといった所だ
「僕、貧血じゃないけど……」
足下で何やら聖十字学園の制服を着た男の子が喋っているが、リクイスにはきっと聞こえていないだろう。哀れな貧血男子
男子用の制服は、スカートが紺と灰色のズボンになった位で大して変わらない。
このまま放置しておくのも、何か可哀想なので運命はアルトに向けてしゃがむと、優しく頭を撫でてあげた。彼の軽く天然が入った金髪のウェーブが弾力を持って跳ね返してくる。
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