6人が本棚に入れています
本棚に追加
周りの木を伐っては削り、適度な大きさにして組み立てる。そうやって父が何年もの歳月を経てやっと造り上げた僕達の家
優しく温もりが伝わる木製の一軒家は家の中に入っても檜の香りが消える事はない。屋根は父さんたっての希望で自然と同じ緑色にした。
「こっちの方が自然とより共存している様で良いだろ?」と、父さんは言っていた。父さんは昔から【牧師】と呼ばれる職業をしていたから僕も昔から聖書を読まされていた記憶がある。
お陰で今はキリスト教の信者とまでは行かないが、少なからず生活に影響は出ている。例えば、食事をする前に感謝の祈りを捧げたり、日常服が真っ黒なスータンだったりと……それがごく普通だと思っていた。
でも、つい最近になって気が付いた。宗教にも様々な派閥があって僕達はその一つに過ぎないんだと、そして何故かは知らないが、父さんは人前に出る事を凄く嫌っている。十四歳になった今でも未だに理由は分からない
「運命(さだめ)、大きくなったら自分の身は自分で守れる様になるんだぞ。」
まだ十歳になったばかりの僕にあの頃の父さんは言った。運命(さだめ)、それが父親(=エル)が愛する息子に授けた名前。
「うん! 僕、お父さんみたいに強くなるよ!!」
昔から口癖の様に父さんからそう言われ続けてきた。父さんがその台詞を言う時は決まって体が小さい運命(さだめ)と目線を合わせる為にしゃがんで頭を撫でてくれていた。それと笑顔
優しい父親像は年月が経っても色あせる事はなく、今でも鮮明な記憶として残っている。そして今、いつもと変わらない日常を過ごして家に帰ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!