始まりの朝

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父は仕事を休む事など滅多にない。 少しでもお金になればと休日出勤や汚ない作業など人が嫌がるような仕事は喜んで受けていた。 私はそんな父を尊敬している。 「仕事休んでまで大事な用事って…何かあったと!?」 私は、一抹の不安を感じた。言い様のない恐ろしい気持ちに襲われる。 そんな私の気持ちを察してか父はなるべく明るく、優しい声で、何の心配もないと言った。 「小鳥、ご飯。早よ食べて仕事出んば、間に合わんよ」 話を聞いていたに違いない母が、話を終わらせるように台所から声をかける。 いつの間にか、私の前には朝食が準備されていた。 お豆腐の味噌汁にご飯。 あと、たくあん。 これが家の精一杯の朝ご飯なのだ。 時計に目を向けると、出勤時間まであと10分ほどしかなかった。 .
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