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整然と碁盤の目のように組まれた通りの両脇には、さまざまな老舗が軒を連ね、見たこともない艶やかさの、素晴らしい品物を並べていた。
しかもそのどれもが、一流の高級品であった。
その風景を目の当たりにして、フキは昨夜のことなどすっかり忘れてしまったように口元が緩み、抑えきれない気持ちをついに開放して、うきうきとしながらあちこちを見て回っていた。
せっかくの京なのだ。
この日ばかりは良いだろうと腹をかきながらマルは思い、昨夜の苦い出来事は水に流し、寝不足の目をしょぼしょぼさせながら、フキの好きにさせていた。
これまでだって、コウタロウもぐずったりせず、足手まといにはならなかったと言って良い。
それはフキが自分の役割を、しっかりと果たしていたからに違いなかった。
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