4月1日

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「志桜 ここにいたのね 来てると聞いたのにいないからさがしたわ」 季節外れの白い薔薇を 小さな手で世話をしている志桜 「王女様」 12歳の志桜の姿はあどけなく 何となく表情も乏しい それでも帽子屋といる時の志桜の表情の変化は 女王から見ても微笑ましいくらい よくわかる 「今日はね志桜にどうしても伝えたいことがあって ね 咲乃」 「え・・・? ええ」 いつのまにやら背後にいる帽子屋 女王の楽しそうな表情とは裏張らぬ 曇った表情をしている 「実はね 咲乃は正式に私の専属の帽子屋になることに決まりまったの」 「・・・??・・・はい」 「つまり それは夫婦の契りを交わすという事です だから志桜にも祝ってほしくて」 「・・・・え・・・はい おめでとうございます」 一瞬間の抜けた声を出すと慌てて一歩下がり会釈をする 「ふふ・・・びっくりするわよね それでね 志桜は今日は何の日か」 「わ・・・私 用事思い出したから帰ります」 女王が言葉を言い切る前に言葉をかぶせると慌ててその場から走り去ってしまった 「・・・だから言ったじゃないですか・・・大人気ない」 ため息混じりの帽子屋に対して肩をすくめる女王 「まさか 最後まで聞いてくれないとはねぇ この色男め」 「辞めてください 僕がちゃんと話をしてきますから」 「きゃっ」 走ったためか何も無い場所でころんでしまう 「痛い・・・」 「大丈夫ですか 志桜」 すぐそこまで来ていたのか慌ててかける 帽子屋 「大丈夫 ちょっと転んだだけだから」 「大丈夫じゃありません 足首を挫いているにではないですか?」 「・・・・・・はい」 「これで大丈夫ですね でも 今日は安静にするように 用事なんて無いですよね」 「・・・用事あります」 「志桜・・・・・さっきの女王の話ですけど 今日は」 「あのね 私ね ちゃんと立派なアリスになるから 咲乃は女王様を支えてあげてね」 「それはわかっています・・・そうではなくて・・・ですから 僕の話を最後まで聞いてください」 志桜の表情が作り笑いなのはよくわかる 乏しいながらに目まぐるしく変わる表情を見ていると口元が綻んでしまう気がした 「嘘だからね」 「え?」 後方からの声に二人が振り返ると 何食わぬ顔で紅茶を口にしている女王がいた
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