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「おぉ。また増えたなぁ。」
ピラッと名簿を捲りながら言ったのは、チビ介。
「有難いよ。ホント。」
そう応えたのはメガネ野郎。
にこにこしながらカウンターに肘をついて、パラパラと名簿を捲るチビ介を見ていた。
「反発の声も聞くけど?」
「考え方は人それぞれだからね。」
「賛同者にも過激派がいるけど?」
「考え方は人それぞれだからね。」
「過激派と反発派で抗争が起こってるけど?」
「う~ん、まぁねぇ。」
少し困った様に眉を下げて、それでも表情は緩やかにチビ介を見る。
「ま、人数が増えればそうなるか。」
チビ介はパフンと名簿を閉じると、バサッと乱暴な音を立てて机に置いた。
それからコクンと喉を鳴らしてココアを飲み干し「さてと。」と、小さく言うと、ガタタタと音を立てて椅子から立ち上がる。
「また様子見に来るよ。」
「はいはい。いつでも。」
チビ介は食事分のお金をジャララっと置くと、シュピッと片手を上げ、チリンと小さな音を鳴らしながら店からサッと出ていった。
メガネ野郎はそんなチビ介をにこやかに見送ると、さっきまでチビ介が食事していたカウンターの上を片付け始めた。
時間帯が時間帯なだけに、食事をしていたのはさっきのチビ介だけ。
そのチビ介も出ていったので、店内はカチャカチャとした音だけが響く。
食器を片付けつつチビが置いていったお金を目で数えていれば、メガネ野郎は少し違和感を覚えた。
「…全然足りねぇ。」
よくよく見ると、半額以下。
チビ介はパンケーキ1枚分のショボい金額を誤魔化して消えた。
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