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「やほー!」
と、元気よく扉を開けて入ってきたのは、水色の髪に青い爪が特徴的なバッチリメイクアップを決め込んだ女性。
「LUCCA!珍しいね!今日は休み?」
「休む。」
女性ことLUCCAはキパッとそう言うと、カタリとカウンターの椅子を引いて座った。手には、もうメニューを持っている。
「お~お~余裕だね~。良いねぇ。」
「良くない。てゆーか余裕ぢゃないしっ!」
冷やかす様に言った琥太郎の言葉に、LUCCAは、ム、とした表情を浮かべた。
切羽詰まったその声は、なるほど余裕ではないらしい。
「締め切りが近いのかな?絵描きさん?」
「うう゛~…ほんとやっばい……。」
「まぁまぁ。評価高いんだから良いじゃん。」
「ううう゛。……とりあえずビール。」
「はいはい。」
LUCCAは画家だ。
この街ではちょっと名の知れた絵描きなのだ。
彼女もまた、ここの常連。
食事よりも、お酒とお喋りを楽しみに来ている事が多いので、専ら来店は夜が多いのだが、今日は制作に煮詰まって気分転換に来たらしい。
「飲み過ぎちゃだめだよ?」
「は~い。あ、コレ名簿?」
「あ、うん、そう。」
「見ていい?」
「いーよ。」
グラスとビール瓶を用意しながら、琥太郎は緩やかに応える。
返事を待たずして、先ほどチビ介が見ていた名簿を、LUCCAはパラパラと捲り出した。
「増えたねー。」
「お陰さまで。」
「どうして画家は対象外かなぁ?」
「いや…まぁ、えっと、…申請ミス。」
「…もー…。」
ぷぅ、と、分かりやすく拗ねたLUCCAを見て、琥太郎は、あははと乾いた声を上げて誤魔化した。
その時、
「今大丈夫かな?」
落ち着いた声と共に、チリンと、また戸が開く音がした。
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