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「紗綾!」
大学のキャンパスに
呼び声が響く…
その声に振り向いたのは
村瀬紗綾(むらせさあや)22歳…。
「由香里」
紗綾を呼んだのは
同級生の
原由香里(はらゆかり)
だ。
「卒業おめでとうだね」
「うん!」
今日は、卒業式…
「紗綾はお家の手伝いに専念するんだっけ?」
「そうだよ」
「いいなぁ~!紗綾ん家和菓子屋さんでしょ~!毎日アンコ食べ放題じゃん」
「うふふ…そうかもね」
「でも折角大学出たのに、何処か別の場所に就職とか…」
言いかけたその時
二人の前に
車が停まった。
「卒業おめでとう」
車の窓から顔を覗かせたのは
桐野尚太(きりのしょうた)26歳…
紗綾の恋人だ。
由香里は流し目で、
納得した様に紗綾を茶化した。
「はー…他に就職先を決めなかったのは、尚太さんが居るからですか~」
「えッ…そう言う訳じゃあ…」
「何、何?何の話し?」
窓から身を乗り出す尚太に、呆れるように手を振り
由香里は去り際に嫌みをもらす
「邪魔ものは退散しまぁ~す」
「あれ?由香里ちゃんも送ってあげるよ?」
「…ついでなら結構!」
遠ざかる由香里の後ろ姿を見ながら
紗綾と尚太は目を合わす
「…なんか、由香里ちゃん怒らせちゃった?」
「…どうかな」
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