はじめての旅。

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彼女は神谷財閥の一人娘、神谷奈帆だ。 国内でも有数の金持ちの娘であることから、本人もそれに影響されて存分に贅沢に育った。 どこへ行くにもリムジン、何をするにも執事が必要なほどだ。 学校ももちろん金持ちが集まる私立の学校であり、ちょうど彼女はそこへ登校しているところだった。 制服も、ベージュのブレザーに青のチェックのスカートという、いかにも可愛さ重視な姿。 胸元に映える赤いリボンが、奈帆のお気に入りだ。 朝の通勤ラッシュで混雑する道路を車内から眺めながら、そんな幸せなはずの生活に、ため息をついた。 車ばかりに見飽きて上を見上げると、ビルのすき間から少し青色が漏れている。 「空が……あんなに遠いね」
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