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そんな彼女を周りは不思議がり、あまり近付かなくなった。
一週間ぶりに下駄箱を開いた奈帆に、鋭く冷たい視線が次々と集まる。奈帆は、そんな視線を跳ね退けるように堂々と歩いた。
「気高いお嬢様って感じで近寄りがたいよね」
「金にまみれて頭おかしくなっちゃったって感じ」
前後左右で集まり、彼女を見て内緒話を始める。
しかし、それを気にすることは全くなかった。大人になればこんなことも終わる、という一抹の希望も抱きながら。
それでもやはり、いつも教室のドアを開ける時には一際勇気が必要とされた。
立ち止まっている訳にもいかず、なるべく弱さを見せないよう胸を張ってドアを開ける。
お嬢様、という肩書きを無理に背負ったまま。
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