『霧島司という男』

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「・・・何だ?」 身長が高くきりっとした顔立ちに細いチタンフレームのメガネをかけた、いかにも切れ者そうなヤツ。 真人から見た霧島 司(きりしま つかさ)の第一印象は、そんな感じだった。 「彼らに自己紹介を」 「・・・・・・霧島、司だ」 「今から、彼ら2人をこの『OVER FLOW』のメンバーに迎える」 「俺は反対だ」 野口が話し終わるのとほぼ同時に、司が意見した。 「司君、いい加減にしなさい。君のその態度でこないだも勧誘が出来なかった」 『こないだも』。 同じ事が前にもあったようだ。 「お前ら、どのツラ下げてこの津木に来ている?お前らみたいな下手糞が走れるほど、ここは甘くは無い。それにな、下手なメンバーが増えたところでチームの意味は無いんだ」 「ちょっと!!そんな言い方ないんじゃないの!!」悠が叫んだ。 「フン、女は黙ってろ」 「なんですって!!」 「野口さん」 その言い合いに割って入ったのは真人だった。 「朝田君、どうしたんだい?」 「俺はコイツが気に入らないし、ハナっから下手糞と見下されて同じチームで走れるほど俺も優しくない。 コイツと走らせてください」 「お、おい朝田、正気か!?」  慌てて翔太が問う。「もちろんだ。 俺だって今まで少なからず走ってきたんだ、俺はここまで言われて黙ってられるほどお人好しじゃない」 「司君、君が言っているのはこういうことだね?彼らの技量が少ないのではないかと」 「そういう事だ」 「なら話は早い、朝田君と司君に2人で走ってもらおう」 「お手並み拝見ってとこね、朝田クン」 翔太はあることを思い出していた。 「『OVER FLOW』の霧島・・・・・まさか」 司がクルマを出してくる。乾いた、パワフルな6気筒の音。 翔太は気の抜けたような声で、真人に向かって呟いた。 「朝田、アイツのクルマは・・・・・・GT―Rだ」 そのエキゾーストとともに現れたクルマは、ブルーメタリックのR32、スカイラインGT―R。ほとんどノーマルと外観は変わらないが、一応ホイールだけは交換されている。 真人は何も言わず司のGT―Rを睨みつけて、ロードスターに潜り込んだ。 「朝田、お前大丈夫なのか?」 心配そうな翔太の顔をよそに、真人は笑っていた。
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