『霧島司という男』

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知ってるか?俺たちが走ってた水越は、事故の多さで誰も寄り付かなくなったんだってよ、つまり、難しすぎたってことだ」 「それがどうだってんだよ・・・・」 「それなりに自信はあるんだ、あのGT―Rに噛み付いてやるさ」 2台が並ぶ。 「よろしくな、霧島さんよぉ」 「フン、まぁいい」 お互いに吐き捨てるように言葉を交わし、カウントは始まる。 野口が前に立ち、両手を上げた。 「・・・・―――GO!!」 1コーナーまでの加速で、すでにR32が1車身リード。 そしてブレーキング。 カネでは勝てない、腕のみの勝負どころ。 R32と完全に同タイミングでロードスターのランプが光る。互角。 クリッピングポイントを過ぎると、マシンの差は如実に現れる。 付いていけない。 古い車とはいえ、GT―Rはいつの時代も偉大だ。 頂上では、翔太が野口と話していた。 「野口さん、あのGT―Rって何馬力くらい出してるんですか?」 「そうだな・・・詳しくは教えてくれないが、400馬力くらいは出ているだろう。ストレートは私のシルビアより速いんだから」 「そうですか・・・・・・」 翔太はため息をついた。 「彼はああ見えて努力家でセンスがある。ここで彼に勝てる走り屋はそうはいないだろうね。 今はただ、朝田君が無事に下りきることだけを祈るしかない」 「そうですね、頼むぞ朝田ぁ・・・・」 目をコースに向ける。ロードスターとR32の差が縮まることはない。 決してクルマが速いだけではない。 徹底的に走りこみ、クルマのセットアップはエンジンから足回り、さらにはブレーキパッドまで研究を重ね、ラインからアクセルオン、オフのタイミング、コース上の轍の箇所まで徹底的に調べてある司のたゆまぬ努力も、この走りを生み出す1つの理由。 ロードスターがR32より300kg以上軽くても、ステージが峠でも、アンダーパワーなのは否めない。 さらに、技術的にも司は真人を上回っている・・・・・現時点では。 (クソ・・・・だからGT―Rってクルマは・・・・) 真人も意地になり、懸命に追う。その差は縮まることなく、広がることも無くなる。 結局、6秒という大差をつけられて、下り1本勝負は終わった。真人の苦~い初バトルの思い出だった。
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