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下り1つ目のコーナーから、真人はスカイラインの走りに舌を巻いた。
ストレートで強烈に離される。
パワーが桁違いだ。
驚くのはまだ早い、コーナー進入前から信じられない角度でクルマを横に向け、恐ろしいくらいの白煙を撒き散らして立ち上がっていく。それでいて、立ち上がり時の車速も速い。
「気合入れてかからねぇと・・・・事故っちまう!!」
目は頼りにならない。今まで走ってきて培ったリズム感が、真人の走りを支える。
その次からのコーナーも強烈だった。彼は白煙全開で、5つのコーナーを流しっぱなしで抜けて見せた。
たまらないのは真人の方だ。視界もへったくれもないのだ。
「~~♪♪」
鼻歌を歌いながら、人差し指でステアをコツコツとつつく。しかしその眼は真剣。
指がステアに当たった瞬間、思いっきりステアをこじる。軽やかに、リズミカルな走り。
その差は着実に縮まりつつあった。
しかし、それから少し走るとロードスターは白煙から抜け出した。
道の端で、スカイラインが停車している。
その後ろにロードスターを停めて、真人がスカイラインに駆け寄ると、ゆっくりとウインドウが開いた。「どうしたんだ?」
「すっ、すいません、ドラシャが折れてしまって・・・・」
「引っ張ってやるよ、牽引フックあるだろ」
「すいません・・・・・・」
牽引フック同士をロープでつなぎ合わせるまでに、真人は何回「すいません」と言われただろうか。
その後、彼に言われて真人が向かったのは、どこにでもある普通のアパート。
大家さんがクルマ遊びに理解のある人で、完全個室ガレージ付きなのが魅力だと彼は話していた。
その分部屋は狭く、ところどころにナックルやサスペンションのスプリング、黒ずんだ触媒などが転がっている。
のむ●んとブ●ッツ34スカイラインのポスターがでかでかと貼ってある。好きなようだ。
「ここまでわざわざ引っ張っていただいて何も用意できませんが、まぁお茶でも」
そういって出してくれたのが、1杯の紅茶だった。柑橘系の香りがして美味しい。
落ち着いたところで、真人は口を開いた。
「そういえば名前聞いてなかったよな。俺は朝田真人だ」
「野村・・・野村 圭太(のむら けいた)です」
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