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この街の走り屋が集まるスポットである『水越』と『津木』、2つの説明をしよう。
彼らが向かっているのは、水越(みずこし)の峠。
街の北西部にある。
道幅が非常に狭く、レイアウトは複雑。おまけに勾配もきつく、テクニカルで死亡事故が多かったため、最近では誰一人走ろうとしない。
・・・・ということを、本人達は知らない。
そして、津木(つぎ)峠。
街の北に位置し、昔からドリフトをする人(ドリフター)、しないで走る人(グリッパー)を問わず人気のステージ。
道幅が広いがレイアウトは複雑。今も昔も人気は全く衰えない。この地方の走り屋3大勢力の1つ『OVER FLOW』の本拠地。
まだまだたくさんあるが、まぁそれは追々紹介していく。
いつも通り、水越の峠に人は居なかった。
聞こえる音といえば、山の木々を風が撫でる音くらいか。
「本当にわけがわからんな、これほどの場所に人がいないなんて・・・・・」
「どうだっていい、人がいなけりゃ好都合だ」
「そうだな、じゃあ行こうぜ」
2人はクルマを発進させた。
誰もいない、誰も来ない場所で、2人はずっと2人っきりで腕を磨いた。
2台が水越の急勾配を駆け上がっていく。道幅が狭いため抜き合いをするのには向かないが、後ろを走る翔太も、前を走る真人も遠慮はしなかった。
少々危ない瞬間もあるが、お互い気にしていない。
心地よい緊張感の中、2人はお世辞にもきれいに舗装されたとは言えない道を駆け抜け続ける。
コーナー (カーブ)が迫る。
ガードレールの向こう側にいる、黒い人影。それを真人は見逃さなかった。
(何だアレ・・・・・・)
次の瞬間には意識をコーナーに傾ける。
思いっきりステアをこじれば、慣性でテールは流れる。
流れていくテールを、真人はアクセルワークで、翔太はフットブレーキで上手くコントロールする。
パワー的には翔太が勝っているので、軽さを生かした真人の進入で生まれる差は立ち上がりで無くなる。
それを眺めていた、一人の男。彼は2人がいなくなるのを見計らって、クルマに乗り込む。
(ふむ、悪くない・・・・・)
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