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横に並んだルージュ・ノワール (フランス語で「赤と黒」)。
あれから往復で5本は走っただろうか、2人は麓から10分ほど走ったところにあるファミレスにいた。
2人ともアイスコーヒーを注文し、いつも通りの愛車の妄想チューニングが始まるはずだった。
しかし、翔太の一言目は違った。
「俺たち、上手くなったのかな・・・・・・」
「・・・・・さぁな、俺たちは他人の評価を知らないからな」
一瞬返事に困った後、仕方なくこう言ってみた。
「朝田は気にしないのか?」
「・・・・・・・・」
真人に返す言葉は無かった。全く同じことを考えつつあったのだから。
今まではただ楽しく、上手に自分のクルマを走らせたい。その一心で互いに高めあってきた。
誰かに認めてもらうつもりも、誰かと自分を比べるつもりも毛頭無かった。
だがある程度自分に自信がつくと、人は誰でも自分がどれほどのものかと、どうしても意識してしまう。
「俺は気にしてるんだ。同じことをしているやつなら他にだっている、俺と他の奴とどちらが優れているかくらいは」
「そうか・・・・・」
「俺たち、どこかチームに入らないか?」
「は?」
突然の翔太の提案に、真人は言葉を失う。
「俺、『OVER FLOW』に入りたいんだ・・・・・」
この地方の走り屋3大勢力の1つとは、さっきも書いただろうか。
真人の戸惑いをよそに、翔太は話を続ける。
「あそこにいれば、いずれは全国レベルでの俺の実力も分かる。今の俺たちの腕なら、いや、足りなくても磨けばいい、一緒に行かないか??」
「馬鹿言え、実力差があり過ぎ―――」
「それが見たいから俺は言ってるんだ!!」
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